映画「LOOPER」ライアンジョンソン版ターミネーター(感想&考察 ネタバレあり)

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サスペンス 映画
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Copyright 2011, Looper, LLC

 

 

映画情報

 

あらすじ

 

ブルース・ウィリスとゴードン=レビットの主演で、30年後からやってきた未来の自分と対じする暗殺者の姿を描く。タイムマシンの開発が実現するも、法律で使用が禁じられている近未来。法を恐れぬ犯罪組織が、消したい標的をタイムマシンで30年前に送り込み、そこにいる「ルーパー」と呼ばれる暗殺者に標的を殺させていた。凄腕ルーパーのジョーはある日、いつものようにターゲットの抹殺指令を受けるが、未来から送られてきた標的は30年後の自分自身だった。(映画.Comより)

 

キャスト・スタッフ

 

監督・脚本:ライアン・ジョンソン(「スターウォーズ/最後のジェダイ」「ナイブズアウト」)

 

ジョー -:ジョセフ・ゴードン=レヴィット(500日のサマー)

オールド・ジョー:ブルース・ウィリス(ダイハード)

 

サラ:エミリー・ブラント(オールユーニードイズキル)

セス:ポール・ダノ

キッド・ブルー:ノア・セガ

スージーパイパー・ペラーボ

エイブ:ジェフ・ダニエルズ

シド:ピアース・ガニォン

オールド・ジョーの妻:シュイ・チン

ベアトリクス:トレイシー・トムズ

オールド・セス:フランク・ブレナン

ジェシー:ギャレット・ディラハント

デイル:ニック・ゴメス

ザック:マーカス・ヘスター

 

感想&考察(ネタバレあり)

 

「ターミネーター」オマージュが濃いSFサスペンス

 

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Copyright 2011, Looper, LLC

 

未来から送り込まれる人間を抹殺する、通称ルーパー。

ある日、抹殺対象として「未来の自分」が送り込まれてくる……。

 

このあらすじ。SF好きならワクワクせずにいられない。謎が謎を呼ぶ娯楽ミステリ!を想像し鑑賞──しかし、蓋を開けてみると、非常に奇妙かつ複雑な物語。ケレン味溢れる独特な演出。ブルースウィリス主演のうたい文句からは予想できない実験的作風。

 

長い間合い、印象的な「目のアップ」、そして複雑な展開や設定をみると「ブレードランナー」を彷彿させるが、実は本作はそれほど堅苦しくない。どちらかといえばターミネーターに近い、誰もが楽しめる近未来サスペンスである。

 

最初に「ターミネーターっぽいな」と感じたのは、路地裏での逃避行シーン。

 

寂れた近未来都市で、車両が放置された路地裏を、ジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が駆ける。時に物陰に潜み、追っ手をくらます。この場面、ターミネーター1作目の序盤でカイルリースが現代の警官から逃れる場面と重なる。

 

後半、オールドジョー(ブルースウィリス)が、犯罪王レインメーカーになる少年シドを抹殺するため徘徊する様子は完全にターミネーター。シドと名のつく少年を見つけては銃口を向ける姿は、サラコナーの名を持つ女性を次々殺害するターミネーターと重なる。

 

そして極め付けは、ジョーとサラ(エミリー・ブラント)の関係。

 

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平地に広がる畑のなかに、ぽつんと建つ小屋。そこに住むタンクトップ姿の女性サラと、彼女の息子シド(ピアース・ガニォン)。そこへ現れるジョー。彼は次第にサラとシドを守りたい、と思い始める。サラもジョーに恋心を抱き、二人は激しく求め合う。

この関係はカイルリースとサラコナーそのもの。サラにいたっては名前も同じで、タンクトップ姿で銃を構える点も共通している。シドはジョンコナーということだろう。

 

低予算を活かした工夫

 

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本作は、起きている事実はスケールの大きな話だが、絵面は非常にミニマム。

それもそのはず、本作はかなり低予算で作られており、中国資本を手に入れてようやく完成までにこぎ着けたそう。なるほど、オールドジョーの彼女が中国系だったり、突然舞台が上海になるのはそういう理由か!しかし、上海の景色が独特な近未来感を演出していたりと、中国資本の背景が良い方向に活きている。

 

そして、低予算であるゆえの工夫が、結果として功を奏している。

 

予算がもっと多ければ、レーザー銃が飛び交い、空飛ぶクルマを飛び移り、ド派手な爆発が至るところで巻き起こる……という描写になり得たかもしれない。しかしそうしていれば既視感溢れるシーンになっていたかもしれないし、そうなると物語の粗がさらに目立ったリスクもある。

低予算のなかで工夫するからこそ独特の雰囲気と緊張感が生まれ、物語の粗を帳消しにするほどの魅力を生んだと思う。

 

個人的に最も好きな「工夫シーン」は、ラストのトウモロコシ畑での対峙シーン。

 

暗がりでの戦闘が続いた前半と対比させるように、青空広がる平地のなか、ジョー、オールドジョー、シド、サラの4人が対峙する。シドとサラをじりじり追い詰めるオールドジョー。緊張感溢れるカット割りで、3人の動き、表情を捉える。やがてシドがTK(超能力)を発揮し、何気ない景色が一変する。

 

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しかし母の言葉で正気を取り戻したシドは、TKをゆっくりとしまう。オールドジョーがシドを殺すのを防ぐため、ジョーは自死を選ぶ。

 

テレビの電源が切れたかのように、瞬時に消えるオールドジョー。抱き合うサラとシドを、カメラは親目線のように遠巻きに映しだす。

 

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巻き起こる銃煙、飛び交う鮮血、近未来の街並みを舞台に繰り広げられるアクション……とは真逆の、静と動を上手く使いこなした画づくりと演出に惚れる。

 

「ナイブズアウト」然り、ライアンジョンソンは低予算のなかでこそ光る監督とつくづく思う。「エアベンダー」や「アフターアース」といったビッグバジェット作を手掛けた途端、興行・批評の両面で失墜したM・ナイト・シャマランにも似たものを感じる。

 

ライアンジョンソンでいえば「スターウォーズ/最後のジェダイ」がそれに当たるだろう。

 

唐突に変わる後半戦

 

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物語面でいえば、観客が最も驚いたであろう、後半から始まるシドとサラのエピソードだろう。

ジョーとオールドジョーの対峙で展開されると思いきや(予告もポスターも二人を中心に作られている)、AKIRAオーメンにも似た「選ばれし悪の子」系ホラームービーへ転換する。

 

アクションサスペンスの様相は消え、シドとサラの穏やかな親子の日常が始まったと思いきや、徐々に不気味な空気が流れだす。「サラは母親じゃない。ほんとうの母親は殺された。サラは嘘つきだ」憎んだ目で訴えるシド。いっぽうのサラは「シドは私が産んだ」と語る。

困惑するジョーの心理と観客の「な、何が始まった……」という感情と重なる。

 

ここまで前半後半でストーリーが分かれる作品は「フロム・ダスク・ディル・ドーン」以来ではないか(気になった方は是非ご鑑賞ください。名作デス)。しかしフロム~と異なる点は、全く別モノにみえた前半後半がひとつに繋がること。ライアンジョンソンの脚本力を感じるシークエンスである。

 

数々の縛りのなか生まれた傑作

 

本作の製作裏話、聞けば聞くほど過酷さを感じる。

 

低予算はもちろん、中国資本を得たことで配給側から「中国シーンを増やす」ことを要求され、中国公開用にカットを増やしたり、若きブルースウィリスに似せるためジョセフゴードンレビットに特殊メイクを施したり(今なら「アイリッシュマン」のようにCGで若くできるだろうがそんな技術も予算もない)、ライアンジョンソンはストレスフルな日々を送っていたことだろう(汗)

 

こうしたしがらみを上手く使い、結果として傑作に仕上げた彼の手腕と努力に最大級のエールを送りたい。目の前にいるなら胴上げしたい。

 

そしてナイブズアウトの続編、待ってるぜ!

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