映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!栄光のヤキニクロード 感想&考察(ネタバレありとなし)

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「クレしん映画で何が一番好き?」

と聞かれたら迷わず答えるタイトルが「栄光のヤキニクロード

 今回は本作を感想&考察します!

※第二部からネタバレ含みますが、内容を知っていても十二分に楽しめる作品なので、未鑑賞の方もぜひご一読ください。

第一部(ネタバレなし)

クレしんの楽しさが詰まった傑作アニメ

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(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

本作の前に公開されたのが、「戦国大合戦」、その前は「オトナ帝国の逆襲」と、原恵一監督の作家性を全開にした意欲作で、世間の評判通りもちろん傑作なのですが、当時製作陣の一部は内容に懐疑的だったそうです。

というのも、しんちゃんとは「とにかくふざけまくるが良し」の子ども向けギャグアニメ。
対して原監督の二作品はどちらかといえば大人に向けた内容で、人間の死やしんのすけの涙を描いたりと、それまでの路線から逸脱した印象でした。

その後、原監督は「しんちゃんでやれることは全てやり切った。このまま続けても二番煎じになる」と言い、クレしんから降板。

その次に製作されたのが「栄光のヤキニクロード」なのです。

当時小学生だった私は家族でテレビで鑑賞。

内容は前二作品の作風から一変したジェットコースターギャグムービーで、当時の私は寧ろ原作品よりこっちのが好き!だったンですが、親は「オトナ帝国のが良かったな」と不満げでした。

それから数十年。

25歳の私でも楽しめるのか?と思いつつ昨日再鑑賞したンですが……うん、やっぱ最高!シリーズで一番好き!となりました。

感動要素は薄れているものの、とにかく笑えて楽しい!という「これぞクレしん」という醍醐味を全面展開させているのが何より嬉しい。
ギャグも子どもだけでなく大人も楽しめる内容になっており、傑作と呼ぶにふさわしい出来と改めて感じました。

彼らを繋ぐのは「焼肉」

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(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

物語はシンプルで、「冤罪で指名手配された野原一家が、追っ手から逃れながらも、敵のアジトがある熱海へ向かう」というもの。

5人は途中、散り散りになってしまい、各々が熱海を目指すのですが、彼らの背中を押すのは「帰ったらみんなで焼肉を食べられる」こと。

さきほど感動要素がないと書きましたが、このテーマに心震わせる観客も多いはず。

金でも地位でも名誉でもない。ただただ家族で焼肉が食べたいという動機だけで、野原一家は泥と血にまみれ走り続けます。

ゆえに、終盤、家族が全員再会出来た時の「野原一家ファイヤー!」の掛け声や、みんなで焼肉を食べて終わるラストが胸を打つ場面になっているのです。

第二部(ネタバレあり)

行き先不明の不条理ストーリー

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(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

逃亡劇と聞くと、真犯人を追う映画「逃亡者」のようなサスペンスムービーを想起しがちですが、そこはクレしん、逃亡者要素は皆無です。

どころかストーリーもほぼ無く、ギャグと圧倒的テンポで押し切られ、そのまま幕を閉じます(笑)しかしこのギャグ&テンポが、ドラッギーな作画と相まって非常に心地いいんですよね。

例えば、終盤。しんのすけが自転車で追っ手から逃げるシーン。

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(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

補助輪なしでは走れない彼が、敵から竹刀で補助輪を破壊されてしまいます。もうダメだ……!と思いきや、そこにはフツーに自転車に乗るしんのすけの姿。
オ、オラ、自転車に、乗れてるゾ!」歓喜の声を上げ空を見上げるしんのすけ。祝福するかのように太陽が彼を眩しく照らします。

その後、かろやかな自転車さばきで敵を翻弄した後、まるで空を飛ぶように崖から駆け落ち(この下りは確実にE.T.オマージュ)雑木林のなかを走り抜けます。

場面変わって熱海の港。
ひろし、みさえ、ひまわり、シロの4人は揃ったものの、しんのすけは来ず。
そのうち敵に見つかり、4人は取り囲まれてしまいます。

絶対絶命……!のその時、耳慣れた声。
「あなた、この声って……」みさえがひろしを振り返ります。

4人が顔を上げると、坂の上に小さく見える、大量の自転車集団。

彼らに追われているのは──補助輪なしで自転車を走らせるしんのすけ!

勢いよく坂を下り、そのまま4人に突撃。
4人は足から火の粉を散らしつつしんのすけを支え止めます。
いっぽうの自転車集団は止まりきれずに海へ次々と落ちていきます。

夕陽を背景に野原一家は互いを見つめ、小さく頷きます。

そこへ、敵陣が襲いかかる!

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(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

一家は横並びになって彼らを迎え撃ちます。

ここの下りがマジ最高!(笑)ドラッギーな作画も相まって大興奮の展開になっています。否、もちろんツッコミどころは満載ですが(なんで自転車で追いかけてくんの?とか笑)、それすらも愛おしくなる、力みなぎる名場面です。

あと個人的に、足から火花散らす描写が大好きでして……(笑)

なんかこう、絵面が最高じゃないですか!(表現下手ですいません笑)

本シーンに限らず、中盤のジェットコースターでの乱闘シーンなど、数多くの興奮展開が詰まった作品となっていマス。

「争いなんて、なかったんだよ」

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(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

その後、野原一家は敵のアジトへ行き、彼らを討伐。

その際、敵が持っていた「想像したことが何でも現実になる機械」を奪います。モノレールに乗りアジトを去りながらひろしはしんのすけに機械を渡し「あいつらにやられた仕返しをしてやれ」と伝えます。

しんのすけはモノレールの天井に立ち、夜の街を眺めながら機械を頭にはめます。

しんのすけは目を閉じ、心のなかでこう呟きます。

敵であるスウィートボーイズのアジトは観光ホテルとなり、そのボスは真面目に働く。なのでそもそもこんな争いは起きない。そしてこの機械自体も存在しない。

こうして争いそのものを消滅させ、非日常から日常へ転換させて幕を閉じます。

──という、何とも粋な展開。そしてしんのすけの「勝ち負けに拘らない姿勢」に感服する場面です。

思えばシリーズ通してしんのすけは「引き分けの美学」を貫いています。

例えば、名作「オトナ帝国の逆襲」は、敵を倒しにかかるのではなく敵の両足にしがみつき、「オラ、大人になりたいから!大人になって、お姉さんみたいな綺麗な人といっぱいお付き合いしたいから!」と鼻血を垂らします。負けを確信した敵らは屋上から飛び降りようとしますが、しんのすけの「ズルいぞ!」の叫びでそれを思いとどまるのです。

このように、しんのすけは一度も「勝ちたい」という感情のもとでは動かず、ただひたすらに腹に秘めた正義感によって突き動かされていくキャラクターなのです。

というわけで、ギャグとアクション、そしてほんのり感動も入った傑作アニメ「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!栄光のヤキニクロード」レビューでした!

コメント

  1. cotovol より:

    良いレビューだね。

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