映画『イエスタデイ(YESTERDAY)』感想&評価(ネタバレあり)

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(C)Universal Pictures

 

もし、みんながビートルズを知らない世界に行ったら……

自分だけがビートルズの曲を知っている売れない歌手が、ビートルズを歌って売れっ子になっちゃった!

 

という幸せ系コメディムービー、「エスタデイ」。

 

今回は本作の感想&評価を書いていきます!(ネタバレありです

 

小規模上映

 

 

大々的に広告を打ち出しているし、題材がビートルズなので、

大きなハコでやっていると思いきや、上映館数も少なく、小さなスクリーンでしか上映していませんでした。公開日の翌日なのに……。

しかし、小さなハコに観客は満員。年齢層も幅広かったです。

なので、期待度も集客力もある作品ではあるのですが、端に追いやられているのは、同時期に上映されている「ジョーカー」の人気が凄まじいからでしょう(汗)

 

ハッピー・パラダイス・ワールド

 

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主人公は、売れないシンガーソングライターのジャック。

幼馴染でマネージャーの女性と二人三脚で仕事をしています。

しかし、売れっ子になれない将来を確信したジャックは、「歌手をやめて、前職の教師に戻る」とマネージャーに伝えます。

反対するマネージャーでしたが、ジャックの決意は変わらず。彼は車から降り、自転車に乗り夜の街を走りながら感慨に耽ります。

その時、世界各地で停電が発生。真っ暗になった街。戸惑うジャック。バスが彼に激突。飛ばされるジャック。

 

目を覚ますと、彼は病室のなか。

ボサボサだった髭は剃られ、前歯は欠けた状態。

一命を取り留めた彼。友人たちは祝福します。

その祝福パーティで、「何か歌って」と頼まれた彼は、ビートルズの曲を披露。

場は沈黙。「素晴らしい」「いつ作ったの」

ビートルズだよ」彼は周りに伝えるも、「何それ」「昆虫かい?」

俺をからかうなよ!立ち上がり、自宅へ戻るジャック。

ネットで「ビートルズ」を調べるも、彼が知るバンドの名前は出てこない。部屋からビートルズのレコードを探すも、見つからず。

 

そう、彼は「みんながビートルズを知らない世界」へ来てしまったのです。

 

罪悪感を抱えながらも、自分が作ったと嘘をつき、ビートルズの曲を披露する彼。

瞬く間に話題を呼び、ついに自宅にエド・シーランがやってきて(ホンモノ!)

「君は天才だ。僕のステージで歌ってみないかい?」

と誘われます。彼はもちろん快諾。

 

エドシーラン

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そこから「売れっ子歌手」としての彼の毎日が幕を開けるのです。

 

 

というのが前半部分。

どうでしょう。夢と幸福しかない展開です(笑)

なんでエド・シーランが自宅とか彼の電話番号知ってんの?!から始まり、その後も「ご都合主義展開」が続いたり、登場人物たちがみんな良い人すぎ!だったり、彼にとって幸福しかない世界が続いていきます。

 

この突き抜けたハッピーパラダイス展開が本作の魅力のひとつです。

 

ほんわかギャグシーン

 

もうひとつの魅力は、ほっこりとなるコメディシーン。

 

たとえば、エド・シーランが初登場する場面。

ジャックの実家に突然現れたエドにジャックはあたふた。音楽の才能を褒められ、エドからライブ出演をオファーされ、幸せ絶頂のジャック。

 

そこへ、ジャックの父がやって来ます。

エドには目もくれず、冷蔵庫やタンスをごそごそ。飲み物を持って立ち去ろう……としますが、立ち止まり、エドに一言。

 

君、エドシーランに似てるね

 

劇場内は爆笑。この場面のほかにも、ジャックの家族のオトボケシーンのたびに場内は沸いていました。

 

幸せいっぱい夢いっぱい映画!しかし……

 

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とにかく最初から最後まで、夢と幸せに満ちた映画。

誰も傷つけない、幅広い年齢層が楽しめるハートフルコメディ!です。

 

しかし……

食い足りない!という部分も多くあります。

 

※以下、ネタバレ含みます。

 

小悪魔エリーにもやもや

 

ジャックのマネージャーであり、幼馴染の女性・エリー。

ジャックが歌手として著名になり始め、ニューヨークへ移ることになるンですが、「一緒に行こう」と誘うジャックに、エリーは頭を左右に振ります。

「私は地元の一教師」と自分を卑下し、住む世界が違う、と拒否。ジャックは説得するものの、エリーの意思は固く、結局、エリーは地元に残ることになります。

このとき、エリーは暗に「ジャックのことが好きだった」「告白してほしかった」というメッセージをジャックに(若干キレながら)伝えます。それなら一緒に行こうよ!と誘うジャックに頭を左右に振るエリー。いやー、めんどくせえ!(笑)

 

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右がエリー。(C)Universal Pictures

 

その後ニューヨークでレコーディングや舞台の準備を進めるジャック。

彼が泊まるホテルへ、エリーが訪れます。って結局来るんかい!

ここぞとばかりにジャックが愛の告白。キスを交わす二人。ベッドイン……と思いきや、「ここからはダメだわ」とエリー。「住む世界が違うもの」

エリーは部屋を去ります。

 

翌日。やっぱりエリーと一緒にいたい!そう考えたジャックは、エリーを追いかけ駅へ。しかし、エリーを乗せた電車は既に発車。ジャックはエリーに電話します。

「後ろを向いて」とエリー。振り返ると、駅前のカフェにエリーの姿が。

 

ジャックはエリーにダメ押しで愛の告白をします。

喚いて拒否るエリー。粘り強く告白するジャック。「帰って!」とエリー。

ジャックは落ち込みながら、カフェを去ります。

 

 

めちゃくちゃ小悪魔!(笑)

 

もう地元にいた時点でジャックとエリーの話はカタがついてたわけですよ。なのに、ニューヨークまで来て、チューまでして、「やっぱりダメ!」って、マジで何がやりたいんだよッ!

純粋なジャックに感情移入していた私は、エリーの小悪魔っぷりにモヤモヤしておりました……

 

そして、トドメは、

私、彼氏が出来たの」とジャックに電話。

その彼氏は……ジャックとエリーの共通の友人。

彼は私を特別な枠にいれてくれたの。友人としての枠じゃない」とかぬかすエリー。

 

ラストは、結局、エリーとジャックが結ばれた~で終わるんですが、私は完全に「そんな彼女なら捨てちゃえば?」状態でした(汗)

見せしめ目的で彼氏にされたジャックの友人もかわいそう……。

 

「消えた存在」の法則性

 

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ジャックが迷い込んだ「ビートルズをみんなが知らない世界」。

実はこの世界、ビートルズ以外のものも「知らなくなっている」ことが中盤から明らかになります。

たとえば、この世界にはコカ・コーラがないです。なので、ペプシばかり頼むジャック(笑)。あと、タバコもないことが判明します。

 

この、「消えるもの」と「消えないもの」の違いって何だろう……?

前述した「コーラ」や「タバコ」って、一般的に「身体によくない」みたいなイメージがあるので、体によくないものは存在が消えてしまう、という法則なのかな……ということは「ビートルズが身体に悪い」とされている世界?なぜ、体に悪いのだろう……

 

と、自分なりに考察しつつ観ていました。

 

そして、結論は……何も語られずに終わります(笑)

 

これけっこう残念でした。

 

「作者と偽る」ことの代償は?

 

ラスト。ジャックは晴れ舞台で、多くのお客さんの前で、「自分がこれまで歌ってきた曲は、ビートルズというバンドがつくったこと」をカミングアウトします。

 

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(C)Universal Pictures

 

自分で作っていたと嘘をついていた、と伝え、謝罪するジャック。騒然とする観客。憤るプロデューサー。舞台から降りると、驚いた表情のエリー。二人のもとへ、たくさんのマスコミが詰めかけます。「逃げろッ」と叫び、走り出すジャックとエリー。

 

その後、ジャックは前職の教師に戻り、子どもたちの前でビートルズの唄を歌う生活に。エリーとも結婚し、めでたし、めでたし。

 

曲をパクった代償は、何も追求されずに終わります。

 

本作が「幸せいっぱいハートフルコメディ」というテンションでつくられているので、ジャックが逮捕されて刑務所で罪を償う生活が始まった……みたいな展開は無理にしても、何の咎めもなく平和に幸せに暮らしましたというのはちょっと納得いかなかったです。

 

たとえば、ダスティン・ホフマン主演の映画「トッツィー」は、女装して「女性と偽り」有名になってしまう男性を描いたハートフルコメディですが、ラスト、男性であると明かした後は、ヒロインや周囲からも壮絶なバッシングを受けます。しょんぼり……とする主人公に、ヒロインは「許し」を与え、映画は幕を閉じます。

 

このぐらいあってもよかったかなーと個人的には思ったりします。

もし、こうしたしんみり展開を入れたくないのであれば、「ビルとテッドの大冒険」ばりに突き抜けたストーリーラインにして、「俺はビートルズで世界一になったんですー!チャンチャン!」みたいな振り切ったオチにすれば良かったんではないのかなーと……

 

どっちつかずの中途半端な着地が少し残念でした。

 

ビートルズの曲すべてが「素晴らしい」のか?

 

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本作はビートルズ賛美映画です。

 

ジャックが「ビートルズのどの曲を歌っても」、人々は感嘆し、称賛します。

 

しかし、ビートルズの曲の全てが「すべての人々を」魅了する、なんてこと、あるんでしょうか?

私もビートルズ大好きですが、全ての曲が好きかと聞かれればNOです。「この曲、微妙だな」って作品もあります。

 

そうした曲さえも愛せてしまうのは、それがビートルズの曲だからです。

しかし、今回の映画では、歌うのは「無名歌手」のジャック。であれば、「良い」とする人もいれば、「微妙」と評する人がいてもおかしくないはずなのに、この世界ではすべての曲を称賛する、ビートルズ全体主義と化しているのです。

 

このシークエンス、若干宗教チックに感じてしまい、自分はノレませんでした(汗)

 

総論:ビートルズへのリスペクトに溢れた佳作

 

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Explore | The Beatlesより

 

不満点も書きましたが、私は総じて良い映画だったと思います。

特段嬉しかったのは、ビートルズへの愛やリスペクトに溢れていたこと。

 

終盤、78歳になったジョンレノンが登場し、

オノヨーコのことを匂わせる発言をし、ジャックの恋心を励ます展開には胸が熱くなりました。

 

 

小規模上映はもったいない佳作でございました。ごちそうさまです!

以上、映画「イエスタデイ」レビューでした!

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