映画「クリード 炎の宿敵」感想&考察(ネタバレありとネタバレなし) ロッキーが一歩踏み出すラストに感動!

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クリード2公式パンフレット表紙より

 

言わずと知れた名作映画「ロッキー」。

そのロッキーのライバルであり盟友・アポロクリードの息子を主人公にしたスピンオフシリーズ「クリード」。

 

今回はシリーズ2作目「炎の宿敵」を感想&考察していきます!

 

※第二部以降はラスト含めネタバレしていきます。未鑑賞の方は第一部を読んだ後、鑑賞後に第二部を読むことをおすすめします!

 

 

第一部(ネタバレなし)

 

「ロッキー4/炎の友情」の続編

 

予告はこちら↓

 

あらすじ

ロッキーの指導を受け、ついに世界チャンピオンになったアドニスに、リングで父アポロの命を奪ったイワン・ドラゴの息子ヴィクターが挑戦状をたたきつける。ロッキーの反対を押し切り、父のリベンジを誓い、アドニスは試合に臨む。(Yahoo映画より一部引用)

 

前作「クリード チャンプを継ぐ男」にて、ロッキーの魂を継承したボクサーのアドニス

次の対戦相手として浮かび上がってくるのが、アドニスの父アポロをリングで殺したイワン・ドラコの息子……って、あらすじだけで面白いの確定じゃねーか!!!

 

このイワン・ドラコというのは、「ロッキー4/炎の友情」で登場した、ロッキーの敵キャラ。この作品でアポロとドラコが対決するんですが、ドラコがボコボコにしてしまうんですね。

 

「このままじゃ死んじゃう!」と慌てたロッキーはアポロに試合中断を提案。

しかし闘志に火がついてしまったアポロはこれを拒否。試合は続行され、結果、アポロはリング上で命を引き取ることになります。

 

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 映画『クリード 炎の宿敵』特別映像【誰が為に戦う編】2019年1月11日(金)公開 – YouTubeより。倒れているのがアポロクリード

 

復讐に燃えるロッキーに、ドラコは挑戦状を叩きつけます。ロッキーは巨人の星ばりのキチ○イトレーニングの末、ドラコと対決。死闘の末、見事ドラコをマットに沈めます。

 

……というのがロッキー4の大筋。

今回の「炎の宿敵」はロッキー4の続編的位置付けなんです。

 

過去のロッキーシリーズのファンからすれば、アポロの息子とドラコの息子が戦って、アポロの息子のセコンドがロッキーって、それ聞いた時点で涙が溢れるわけですよ(笑)

ハンカチを握りしめて劇場に足を運びました。結果ボロ泣き。5回観に行きましたよ……そりゃそうでしょう……最高すぎるもん……

 

人間味溢れるキャラになったドラコ

 

映画は最初、ドラコと彼の息子ヴィクターの日常から始まります。

いかにも安めのボロアパート。こじんまりした部屋で朝食を取るふたり。

 

部屋を出ると、どんよりした曇り空。寒風が静かに二人の間を通り抜けます。

 

ドラコは車に乗り、ランニングするヴィクターを煽ります。

屈強な肉体を揺らし走るヴィクター。彼の目は冷徹で、それでいて煮えたぎる闘志を感じます。

 

ここまでのシーンだけで、ドラコ親子がロッキーに敗北した後、いかに寂しく、惨めな生活を送っていたかがわかります。4の時にはいた妻も部屋にはいなかったので、おそらく別れたのでしょう(中盤で妻に「捨てられた」ことが判明します)。

 

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映画『クリード 炎の宿敵』特別映像【誰が為に戦う編】2019年1月11日(金)公開 – YouTubeより。ドラコがロッキーに怒りを滲ませる場面。

 

二人がその後、向かった先は、ロッキーがランニングの際使っていた、フィラデルフィアの長い階段。二人は、のし、のし、と登り、最上階に到着します。

フィラデルフィアの風景を眺める二人。彼らの後ろには、ロッキーが天高くグローブを上げる銅像

 

……という、彼らの怒りと絶望を表すシーンが冒頭に登場するわけです。

4ではただのロボットのような描かれ方だったドラコが、非常に人間的なキャラとして本作は浮かび上がります。それにより、私たち観客も感情移入してしまい、結果、「アドニスも勝ってほしいけど……ヴィクターも勝って!」というアンビバレントな気持ちが生まれるわけです。

 

その後も、アドニスたちの日常とヴィクターの日常が交互に描かれていきます。

そのため、最後のほうでは私はすっかりドラコ親子側に感情移入してしまい、試合が引き分けになることを強く望んでおりました(笑)

 

アドニスVSヴィクター、その結果は……?

 

恋人ビアンカと結婚し、順風満帆な生活を送るアドニス

そこへ、ドラコからの挑戦状が現れます。

父の命を奪った人間からの果たし状。アドニスは対決を受諾しよう……としますがロッキーに止められます。

 

父親の二の舞にしたくない、という切実なロッキーの想いに、アドニスは反抗します。

俺じゃ勝てないって、そういう意味かよッ

憤るアドニス。それを沈めようとするロッキー。しかしアドニス聞く耳を持たず、「子どもにも見捨てられた寂しい老人」という酷い言葉をロッキーにぶつけ、その場を去ります。

 

ここのシーン、彷彿したのは「ロッキーザファイナル」でのロッキーの息子とロッキーとの会話シーン。

 

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ロッキーザファイナル 日本予告 より。

 

高齢ながらリングに再び上がることを誓うロッキーを、汚い言葉を浴びせ辞めさせようとする息子に、ロッキーは激昂。息子も受け入れざるを得なくなる……というシーンがあるんですが、この「炎の宿敵」のアドニスとロッキーのシーンが、ザファイナルのそのシーンの風景から撮り方からソックリなんです。

推察するに、ここのシーンは、アドニス=昔のロッキー、今のロッキー=昔のロッキーの息子、という対比構造を浮き彫りにさせた見せ方をしているのではないでしょうか。

 

そしてアドニスは、昔のロッキーと同じように、制止を振り切り対決を決めます。

 

試合当日。アドニスのセコンドには、ロッキーではない人間。

ロッキーは自身が経営するレストランのテレビにて、その試合を見ていました。

圧倒的な体格。鉄の塊のようなヴィクターからの攻撃に、アドニスは成す術なし。

血にまみれるアドニスセコンドが中断をアドニスに提案するも、頭を左右に振るアドニス

 

「やめさせろ……」ロッキーは呟きます。「やめさせろ……誰か……」

 

次の瞬間。ヴィクターの激しいパンチがアドニスの身体に深くめりこみます。リングに倒れるアドニス。うめき声を上げ続ける彼を見下ろすヴィクター。試合は幕を閉じます。

 

ここ、マジで恐怖でした。

アドニス、死ぬんじゃねえか……?ってぐらいのやられっぷり。

血にまみれるアドニスをひたすら殴りつけるヴィクター。その光景はもはや殺人。

 

結果的にアドニスは生還。

ヴィクターの反則行為が認められ、試合はアドニスの勝利となりますが、納得のいかないアドニスは再戦を誓います。

 

アドニス・クリードの「自立」の物語

 

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映画.com フォトギャラリーより。

 

前作「チャンプを継ぐ男」はロッキーからクリードへの魂の継承の物語でした。

と同時に、父アポロの魂を受け継ぐ物語でありました。

 

今回の「炎の宿敵」は、そのロッキーと父アポロから自立していく物語です。

 

ヴィクターとの再戦を誓うアドニス

その闘志に突き動かされたロッキーは、セコンドを引き受けます。

しかし、ヴィクターからの殺人的なパンチの応酬を想起し続けるアドニスは、精神的にも不安定に。加えて妻ビアンカが出産した子どもは、ビアンカの遺伝を受け継ぎ、難聴であることが判明。妻と子どもを守り続けることが出来るのか?父として全う出来るのか?という不安が、アドニスを押し潰していきます。

 

アドニスは押し潰されるあまり、この戦いが「自分のため」ではなく「父のため」に行なうものだ、と自分に言い聞かせます。そうすることで、「誰かのため」という大義名分が生まれ、他責、すなわち、誰かのせい、父のせいにし、心の安定を保つのです。

 

しかし、そんなアドニスを、彼の母は叱責します。

アポロのために戦うんじゃないでしょう?!あなた自身のために戦うんでしょう!

 

母からの叱責、そして周囲の言葉から、彼は思いなおし、改めて自分と向き合っていきます。

 

第二部(ネタバレあり)

 

※以下、ラスト含めネタバレしていきます!

 

試合の結末は……

 

そして迎えた試合当日。

相変わらず鋼鉄の男ヴィクターと、この日のために巨人の星ばりのトレーニン*1を積んできたアドニスのバキバキの肉体。二人の身体が激しくぶつかり合います。

 

両者ともにいい勝負でしたが、やがてヴィクターが劣勢に。

初戦とは逆に、このままじゃヴィクター死んじゃう!というとこまで追い詰められていきます。

 

そして……

白いタオルが一枚、リングの上を舞います。

 

それを投げたのは、父・ドラコ。

 

あれだけ復讐に燃えていた彼が、白旗を上げたのです。

それは他でもない、息子のため。

 

試合はアドニスの勝利で幕を閉じます。

 

試合後。寒空の下、ランニングするヴィクター。

その横には、ともに走る父ドラコの姿。

 

試合の勝利はアドニスでしたが、ドラコ親子は決して敗北なんてしていなかったのです。

彼らは勝ち負け以上に大切なものを見つけ、取り戻したのです……って、なんて泣ける話なんだ!!!

 

一歩踏み出したロッキー

 

と、ここまで描かれてきたのは、アドニスとドラコの物語。

ロッキーは常に傍観者&サポートとして立ち振る舞うだけでした。

そして最後はアドニスの自立。完全にロッキーは後ろに追いやられてしまいます。

 

これ、ロッキーシリーズのファンとしては、アドニスの成長を喜ぶと同時に、一抹の寂しさもあり……。結局は老いて忘れ去られていく存在ってことか、もう彼の物語は見れないのか、なんて思いながら観ておりました。

 

しかし、その後、ロッキーはアドニスと同じように、大きな一歩を踏み出すのです。

 

それは、長年疎遠だった息子に会うこと。

 

前作「チャンプを継ぐ男」にて、息子とは絶縁関係にあることがほのめかされていました。

 

冷蔵庫には、幼少期の息子とロッキーとの写真。

 

寝床には家族の写真があるついたて。

 

ロッキーの部屋には息子との思い出がぽつぽつと残されていました。

そんな彼が見出した生きがいが「アドニスのサポート」。しかし彼が自立したことで、その生きがいも失います。

虚無感に襲われるロッキー。彼のなかで、ある感情が芽生えます。

 

もう一度、息子に会いたい

 

受話器を取り、息子の連絡先の番号を打とうとする。

ああ……やっぱやめておこう、と受話器を置く。

 

連絡すればいいじゃん、と笑うアドニス

うん……と俯くロッキー。

 

「息子に連絡するぐらい、すぐやればいいのに」

周囲から見れば、小さな一歩のように見えますが、彼にとっては、大きな一歩。

それは、高齢でリングに上がることより、勇気のいることなのです。

 

しかし、終盤。彼はその一歩を踏み出します。

息子の自宅の前。扉を叩くロッキー。

嫌われたらどうしよう。傷つけられる言葉を浴びせられたら、どうしよう。

それは、どんな激しいパンチより、彼を深く痛めつけるもの。

胸の鼓動が高鳴るロッキー。

 

その時、静かに扉が開きます。

そこには、息子の姿。

はにかむロッキー。

久しぶりの父の姿。息子は静かに笑い、ロッキーを部屋へ迎え入れます。

 

こうしてロッキーは、かけがえのない存在を取り戻すことが出来たのです。

 

現実世界では、息子を心臓発作で亡くしているスタローン。*2

彼は映画というフィクションのなかで、その「失った存在」に触れ、再会するのです。

 

総論:すべての世代に突き刺さる「人生についての映画」

 

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映画.com フォトギャラリーより。

 

本作、私は「人生についての映画」だと思っています。

 

25歳の今の私には、アドニスの自立の物語と、社会人2年目として自立の途上にある自分とを重ね合わせ鑑賞しました。

そして、いつか結婚した時、再度鑑賞すると、アドニスの父としての葛藤が更に突き刺さる。仕事を定年退職した時に観れば、ロッキーの心境が刺さる。

 

このように、観た時の年齢や状況に応じて、刺さるものが変化していく、まさに人生映画なのです。

 

 

前作に続き名作となった本作「炎の宿敵」。

次回作にも期待ですね!!!

 

ってなわけで以上、クリード/炎の宿敵 感想&考察でした!

 

 

「ロッキーザファイナル」評はこちら↓

 

ラッパー宇多丸師匠の「クリード/炎の宿敵」評はこちら↓

*1:Creed 2 Training Scene HD – YouTube

*2:2012年7月13日、ロサンゼルス市ハリウッドの自宅で死亡しているのが発見された。当初、死因は不明とされたが、その後の検死で、心臓発作による自然死であることが分かった。36歳没。(Wikipediaより引用)

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