【幻に終わった映画】押井守版「ルパン三世」 ルパンが盗んだのは心ではなく虚構だった…

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押井ルパンが盗むものは何なのか?

 

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宮崎駿監督「ルパン三世 カリオストロの城」から5年後。

テレビシリーズの放映に伴い、再度劇場版の製作が発表されました。

監督は押井守。全アニメファンが期待したこの作品は、結局、幻と化してしまいます。

 

本作はどういった内容だったのか、

何故、幻となってしまったのか、

について、今回は書いていきます!

 

 

押井守の登板

 

カリオストロの城の成功もあり、当初、宮崎駿監督に再登板の依頼がありました。

しかし、駿はこれを拒否。代わりに、駿の事務所「二馬力」にいた押井守を推薦します。

 

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当時、「うる星やつら」で評価を受けていた押井。依頼側も駿の提案に賛同し、登板が決定します。

 

宮崎駿「こんどの映画の話が「やらないか」ってぼくのところに来たから、もうぼくはできないから、押井守が適当だろうといったわけです。偶然、横にいたしね(笑)。それに「ルパン」という企画は、ふところが深いんです。だから、何かやりたいことをもっている人間とうまく合体すると、とんでもないことができるのじゃないかという気がしましたからね。」(アニメージュ1984年10月号)

 

……と、インタビューでは語っていますが、推察するに「もうやりたくなかった」からじゃないかと思います。

というのも、この「カリオストロの城」、観客からの評判は良かったんですが、原作ファンからは批判も多かったのです。ルパンが紳士的なキャラに突然変わっていることもそうですが、最大の理由は「最終的に盗むのが、少女の心」という点。

金を奪うことに注いできたルパンが、金ではないものを盗む。しかも、目に見えない「心」という存在。

 

こうした異質な着地をしたのは、「盗むものがもはやない」と宮崎駿が判断したからだろう、と押井守は語っています。

 

もともと宮さんは、ルパンが盗むものがなくなっちゃったと言ってた。宝石であれ現金であれ、何を盗んでもさしてカッコイイと思えないって。泥棒であるルパンが何を盗めば一番同時代的であり得るのかという話はその時点で宮さんとだいぶしたんですが、「カリオストロ」の時点で既になかった。だから何を盗んだかというと、非常にあの人らしい企みがあって、古典的な物語の枠組に回帰したというか、贋札の原版という動機はあるけれども、最終的にはクラリスという女の子の心を盗んだ。もうこれ以上盗むもんないじゃないかって。普通なら恥ずかしくてやらないことなんですけど、宮さんは抜け抜けとやった。それが「カリオストロ」の良さだと思うんですよ。(「THE ルパン三世 FILES」より)

 

こうして盗むもの限界を感じた駿は押井にバトンタッチ。

悩んだ末、押井はあるものを盗むことを発案します。

 

虚構を盗む

 

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押井守は本作で、「虚構を盗む」というストーリーラインを作ります。

今までのルパンが盗むものは、お金や宝石といった現実世界の財産でした。しかし押井は、「そもそもフェイクであるこの作品に、現実というものがあるのだろうか」と思案します。つまり、作品自体が虚構なのだから、現実というものは存在しない、その全てが虚構なのだ……と。

書いてる私もワケがわからなくなるこの設定(笑)

 

そして、最終的には

「天使の石を探し求めていたルパン。ラストにそれを見つけるが、実はそれはプルトニウムだった。それに触れた瞬間、東京は爆発。全てが吹っ飛び、消えてしまう」

という物語が完成します。

 

すなわち、「天使の石」も虚構であるし、世界も虚構であるし、さらにはルパンというもの自体が虚構だった……というオチ。

 

全部が虚構で全部がどんでん返しで、確かなものなんか何もないという話。世の中に唯一確かなものがあるとすれぱ、それは当時で言えば「核」だった。それを活劇の枠の中に入れようという、当時の僕としては最大限の企画だったんですよ。(「THE ルパン三世 FILES」より)

 

猛烈な反対により企画消滅

 

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この脚本を読んだプロデューサーたちは猛反対。

ストーリーが難解であることはもちろん、当時カリオストロから続いていたファミリー層を意識したテイストからは激しく逸脱した内容だったことも、反対の要因でした。

 

プロデューサーたちは押井に対し代案を要求します。

しかし、この内容で行なうという押井の強い意思から、代案を拒否。結果的に「喧嘩別れ」をし、企画は消滅します。

 

半年間ルパンの準備に取り掛かっていた押井守

この期間をともにしたスタッフの数人は企画の消滅を聞き、押井の元から離れてしまいます。

一部の人間から信頼を失った彼は、激しく落ち込むと同時に、「必ず見返してやる」という気持ちを抱くことになります。

 

押井の復讐戦

 

その後、押井は「天使のたまご」という作品を作ります。

 

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これは、押井版ルパンの設定にあった「天使の石」をもじったタイトルであることはもちろん、内容自体も「現実と虚構」をテーマにした、押井版ルパンで成し得なかった物語が構築されています。

 

その後で作った「天使のたまご」(85)に、そういうものが全部流れ込んじゃったということはありますね。”天使の化石”を持ち込んで、成立したかった僕のルパンの復讐戦だったんです。実際、そのルパンの中で考えてたいくつかのアイデアは後の作品でみんな使っちゃったんですよ。そういう意味で言えぼ僕自身は充分元をとった。惜しかったという感情は今となってはないですね。(「THE ルパン三世FILES」より)

 

その後、2000年に再び押井にルパンの依頼が訪れます。

「好きにしていい」と言われたものの、押井は依頼を辞退。理由は「主人公に腕毛が生えてるのが気に入らないから」。2008年に押井はこの件について、「今の時代にあんなキャラを成立させられない」と語っています。*1

 

 

うる星やつらビューティフルドリーマーのファンとしては前衛的な本作を実現してほしかった……と悔やまれるのですが、この企画消滅がなければその後の名作は生まれなかったことを考えると失ったものばかりではなさそうですね……!

というわけで以上、【幻に終わった映画】押井守版「ルパン三世」でした!

*1: 別冊宝島押井守ワークス スカイ・クロラ」より 

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