【ラスト考察】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド レビュー(ネタバレあり)

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お題「最近見た映画」

 

今回の記事は、

 

  • 第一部:本作の概要と映画を観る前に必要な知識
  • 第二部:ネタバレ含む大考察

 

になっていますので、まだ鑑賞されていない方・気になっているが観るか悩んでいる方は第一部を読んでいただき、鑑賞後、第二部を読むことをおすすめします!

 

 

第一部

 

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シャロンテート殺害事件

 

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本作は60年代ハリウッドの風景とともに、そこで生きていた人たちをのんびり、ゆったり描きつつ、ハリウッドを揺るがす一大事件だった「シャロンテート殺害事件」を描いています。

本作は鑑賞前にこの事件を知っておくとより楽しめる(というか知らないとわからない場面がかなりある)ので、まずこの事件を紹介します。

 

テレビシリーズに多く出演し、人気を博していたシャロン

1968年には映画監督であるロマンポランスキーと結婚するなど、充実した人生を送っていました。

 

しかし、結婚の翌年、彼女は殺害されてしまいます。

 

犯人は狂信的カルト指導者チャールズ・マンソンの信奉者達の一人、スーザン・アトキンスら3人組。

一緒にいた他の3名の友人達と、たまたま通りがかって犯行グループに声を掛けた1名と共にロサンゼルスの自宅で殺害されました。

 

当時シャロンは妊娠8か月で、襲撃を受けた際に「子供だけでも助けて」と哀願したというが、それが仇となりアトキンスらにナイフで計16箇所を刺されて惨殺された。ポランスキーは、生まれることなく死んだわが子にテートと自らの父の名を取ってポール・リチャードと名付け、テートとともに埋葬した。(Wikipediaより引用)

 

…という、なんとも酷い話。

 

マンソンファミリー

 

シャロンテートを殺害したマンソンファミリー。

本作では彼らが頻繁に登場し、物語の主軸に関わっていくのですが、作品内では彼らの具体な情報は出てこないため、ここで詳しく書いていきます。

 

カルト指導者であるチャールズマンソンが家出少女を集めて「マンソンファミリー」という集団をつくり、共同生活を始めます。

 

↓本作に登場するチャールズマンソン

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彼はLSDを用いて少女たちを洗脳し、信者にしていきます。

 

音楽家マンソン

 

チャールズマンソンは音楽家を自称しており、実際いくつかの楽曲を制作しています。

それゆえ、音楽家や芸術家との繋がりもあったそうです。

 

マンソンは当時のアメリカン・ポップ・カルチャーの「悪のシンボルとして歴史に名を刻むことになりました。

 

第二部

 

ここからは本作の内容をラスト含めて紹介・考察していきます!

 

感想は「最高」

 

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鑑賞後の感想は「やっぱタランティーノは最高」でした。

映画の3分の2はゆったりとした時間が流れ、最後に一気に盛り上がり、そのままエンドクレジット!の流れはもうタラちゃんの定番となりつつありますが、本作でも健在。そして見事に盛り上がる(笑)

 

と、同時に、今回はタラ映画に珍しく「感動」がありました。

 

映画という魔法を信じ続けて生きてきたタラちゃんだからこそ生まれたラスト。

これで全てが救われるわけでもないし、現実に何かが変わるわけではない。けれども映画のなかや劇場に足を運んだ人々の記憶のなかでシャロンテートが生き続けてくれれば……というメッセージに心を揺さぶられました。

 

ゆったりと流れる贅沢な時間

 

余白の魅力

 

タランティーノ映画の魅力は、「贅沢な余白」にあると思っていて、

本筋とは何の関係もない会話やシーンが続いていくのを楽しめるか楽しめないか?がタラ映画にハマるかハマらないかの分かれ目になっていきます。

 

例えば、「イングロリアスバスターズ」。

 

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DVDで観たんですが、前半はほぼ早送りしてしまいました。

 

その後、初めて映画館でタラ映画を観たのが「ヘイトフルエイト」。

 

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その時、タラ映画は映画館で観なければいけないことに気が付きます。(映画全般そうではありますが汗)

広々としたスクリーンにじっくり映し出される風景、演技派キャストの深みある会話劇。それらがじっくりと描かれることで、観客はまるで映画のなかに一緒にいるような感覚に陥ります。

この贅沢な時間こそがタラ映画最大の魅力なのです。

 

シャロンテートの日常スケッチ

 

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本作ではその「余白」が非常に多いです。

当時のハリウッドの風景、そこに生きる人々を時間をかけて描いていきます。

 

なかでも象徴的なのが、シャロンテートの日常シーン。

自分の映画を観て微笑むシャロン、夫であるポランスキーとドライブを楽しむシャロン、ハリウッドの青空の下を歩くシャロン

彼女の輝きに満ちた日常風景タランティーノが見事にスケッチしています。

 

「いつか彼女は殺されてしまう」

その結末を知っている側からすると、その幸せな時間は切なさを感じると同時に、

「めいっぱい楽しんでほしい。せめてこの時間だけでも幸せに生きてほしい」という願いを映画という空間のなかで再現してくれたことへの嬉しさを感じました。

 

TV俳優とスタントマンの友情

 

本作の主人公となるのが、デカプリオ演じるリックと、ブラッドピット演じるクリフ

 

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クリフは長年リックのスタントマン兼お世話係として働いており、二人はまるで恋人のような関係。

TV俳優では悪役としての仕事はあるものの、映画スターへのキャリアを拓くことが出来ず悶々とした日々を送っています。そんな彼を慰め、勇気づけるクリフ。

 

 

この二人のイチャイチャシーンがじっくりと描かれていきます。

 

ハリウッドで夢を掴めずにもがく二人の青春の日々。

暑苦しい二人の友情の日常には微笑まずにいられません。

 

動き出す物語

 

マンソンファミリーとクリフ

 

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中盤、クリフはとあるヒッピー(家出少女)に出会います。

「うちまで送ってほしい」と微笑む少女を、クリフは自分の車に乗せます。

 

到着した場所には、西部劇を思わせる殺風景な風景。

家屋から数人の少女がクリフを睨みつけています。

そこで何か違和感を覚えたクリフ。

少女たちのなかにいた年配の女性に、この場所の長である男性に会わせてほしいと申し出ます。

最初は拒む女性でしたが、クリフの押しの強さに負け、男性のもとへ連れていきます。

そこには、寝たきりの盲目の老人男性。

ますます違和感を覚えたクリフ。男性に状況を問い詰めますが、男性は具体なことは何も言わず。

クリフは眉をひそめながら家屋を出ます。

車に乗ろう……とした瞬間、タイヤにナイフが突き刺されているのを発見。

顔を上げると、睨みつける女性と少女たち。

そのなかから、ひとりの若い男性が顔を出します。

彼こそが、チャールズマンソン。

クリフはマンソンを血祭に上げ、その場を去ります。

 

マンソンたちはそこで、クリフへの復讐心を募らせることになります。

 

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この下りは前半3分の2のなかで唯一ハラハラするシーン。

タランティーノの洗練されたサスペンス演出を堪能出来ます。

そして、ここでの「タイヤに突き刺されたナイフ」という場面が、ラストで重要な意味を持つことになります。

 

 

殺害決行

 

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そして迎えた、シャロンテート殺害の夜。

 

事件を知っている私は「いよいよあれが始まるのか……」と一抹の悲しさを覚えていました。

 

マンソンと少女数人は車を走らせハリウッドスターが集まる邸宅街へ。

目的はシャロンテートの殺害です。

彼らは邸宅のある敷地へ車を停めます。

すると、邸宅から怒鳴り声とともに、男性が現れます。

それは、リック。そう、ここはリックの邸宅だったのです。

「今すぐ出ていけ!サツを呼ぶぞ!」と叫ぶリック。一度は拳銃を握るマンソンでしたが、思い直し、邸宅を後にします。

その時、車のなかの女性がマンソンにこう告げます。

「あの男、昔テレビによく悪役で出ていた俳優じゃない?」

そこから彼らはある計画を思いつきます。

 

「テレビで殺人を教えた男を殺害する。悪をぶっ倒す」

 

このアイデア歓喜するマンソンたち。

有言実行!とばかりに彼らはリック邸宅に戻ります。

ナイフと拳銃を手にし、邸宅へ入るマンソンたち。

 

しかしそのなかにいたのは、リックではなく、

ちょうどリックの世話のために来ていたクリフでした。

 

少女はリックの妻にナイフを向け、クリフを威嚇。

マンソンは拳銃をクリフに向けます。

 

次の瞬間、クリフの飼い犬がマンソンの股間に噛みつきます。

 

叫ぶマンソン。ここぞとばかりにクリフ反撃。

ひとりの女性にナイフで太ももを刺されるクリフでしたが気にせず反撃。

 

リックの妻も反撃!

ファミリーをめったうちにするクリフ。

 

血まみれになった女性は叫びながら窓の外へ。

そこには、プールで寝そべるリックの姿が。

血まみれで叫ぶ女性に驚くリック。女性はそのままプールのなかへ。

リックは納屋にあった、映画で用いた火炎放射器を手に取り、プールにいる女性に炎を浴びせます。

 

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女性は丸焦げになり、プールに浮かびます。

 

 

しばらくして、救急車と警察が登場。

救急車に運ばれるクリフに、リックはこう伝えます。

 

最高の友達だ

 

微笑むクリフ。救急車はハリウッドの夜のなかへ消えていきます。

 

見送ったリックの後ろから、男性が呼びかけます。

「何があったんだい?」

詳細を伝えるリック。

男性は、そうか、と呟いた後、「いまロマンポランスキーと一緒にいるんだ」と伝えます。

ポランスキーの存在を知り興奮するリック。

リックと男性はポランスキーのもとへ向かいます。

 

そこには、妊婦さんになったシャロンテートの姿が。

 

カメラはゆっくりと彼らから離れていき、

そこでタイトル、

 

Once Upon a Time in Hollywood

 

の文字が被さり、終幕します。

 

もう……感動

タラちゃん、キミってやつは……

映画の可能性を信じ続けた男が起こした魔法。それにより生まれた奇跡のおとぎ話。

ワンスアポンアタイムインハリウッドの意味を、観客はここで知ることになるのです。

 

オンボロタイヤと落ちぶれたスタントマン

 

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このシークエンスでもうひとつ語られているのが、クリフの物語です。

リック以外のスタッフやキャストからは見離され、輝かしいキャリアからは程遠い生活を送るクリフ。

彼はリックに支えられ、そしてリックを支えて生きていくことで、自分の存在意義を見出しています。

 

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それはまるで、ボロボロになりながらも車を支えて走り続けるタイヤそのもの。

 

反撃シーンのなかで、脚をナイフで刺されるクリフですが、

そのショットはナイフの刺す方向が、中盤のタイヤにナイフが刺されたシーンと同じ構図になっています。

 

そして、脚を刺されながらも立ち上がり、戦うクリフ。

タイヤは刺されて空気が抜けてしまえばおしまいですが、クリフはどれだけ潰されても立ち上がり続けるのです。

それは自分のため、と同時に、最愛の友人・リックのためです。

 

おお……クリフ……シビれる……

 

総括:最高のおとぎ話。しかし……

 

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というわけで、本作、私は大満足の内容でした。

あと2回は観に行きます!(笑)

 

なのですが、不満を感じる部分がないわけではありません……

 

ブルースリー、クソすぎ

 

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既にあちこちから批判の声が上がっていますが、

本作で登場するブルースリーがクソすぎて……

 

キャストやスタッフにめちゃくちゃ偉そうなブルースリー

挙句、クリフとの一騎打ちであっという間に倒されてしまいます。

 

ブルースリーより強いクリフ」という印象を与えることで、

終盤のマンソンファミリーとの戦いの勝利に説得力を持たせる効果を狙っているのでしょうが、「キルビル」でリスペクト愛を炸裂したブルースリーを、物語の駒のひとつとして使っって……どうなんですかねえ(笑)

 

この件について、タランティーノは以下のように反論しています。

 

ブルース・リーは実際は少し横柄な男だった」と反論。

「(この映画における)彼の話し方は、でっち上げではない。彼がそういうことを言っていたと聞いている。『彼がモハメド・アリを倒せるだなんて言ったわけがない』という人がいるかもしれないが、実際に言っているんだ。私が最初に読んだ、妻リンダ・リーの最初の伝記にもそう書いてあった。リンダは確実にそう言ってる」。

(映画.comより*1 )

 

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ブルースリーのドキュメンタリーを観ると、怒りっぽくプライドの高い人物だったことは想像がつくのですが、

それにしたってクソ人間として描きすぎでは……(笑)

 

火炎放射器シーンの不自然さ

 

終盤、リックが敵に放射器で炎を浴びせ丸焦げにするシーン。

 

本作のなかでも一番アガるシーンでありますが……ただ、不自然な点もあります。

 

まず、リックはずっとプールにいたため、女性が敵であるか味方であるか知らない状況なわけです。

その状況であれば、窓から血まみれの女性が飛び出してきたら……被害者だと真っ先に思いませんでしょうか(笑)

 

すぐに敵だと決めつけて炎を浴びせる、という展開は、気持ちの変化としては不自然では……

 

エンドクレジットのおふざけ

 

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ラストでタイトルが登場し、ハリウッドの夜が静かにフェードアウトしていき、エンドクレジットに突入。

観客は幸福な余韻に浸りながらクレジットを見つめます。

が、突然、リックが登場。「俺の二重顎が映った写真を立て看板に使うな!」といったおふざけシーンが続きます。

 

せっかく「シャロンテートの幸せな表情」で終わっていたのに、リックをクレジットで挟むなよ~(笑)

おとぎ話でした、で静かな幸せにシメたのに、おふざけ入って終わりという演出に、少しガッカリ感を覚えたのは否めません。

 

しかし、総じて大傑作

 

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という不安点はいくつかあるものの、総じて大傑作でした!

本作をタラ映画最高傑作と呼ぶ方がいるのも納得です。

 

作品を重ねるごとに演出力を増していくタラちゃん。

10本撮って終わりといわず、死ぬまで撮り続けてくれよ!*2

そういいたくなる最高の映画でございました。

 

ごちそうさまです!

 

 

*1: タランティーノ監督、ブルース・リー描写に関し遺族からの批判に反論 : 映画ニュース – 映画.com 

*2: 以前よりタラは「映画づくりは10本でやめる」と宣言しており、今回が9作目。タラ曰く「将来はテレビや舞台なんかを手がけるかもしれない。でも、劇場用映画は、次で終わりだ。もう長いことやってきたし、何事にも終わりがあるべきと思うから。それに、ボロボロになってやめるんじゃなく、これ以上はもう無理だろうというものを残して去って行きたいんだよね」とのこと(文春オンラインでのインタビューより) 

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