シュワルツェネッガーという男 Vol.2 黄金期

〜という男
〜という男 映画
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Vol.1はこちら↓

 

前回はシュワの発展途上期(コナンザグレートからツインズまで)を書きましたが、

今回はシュワの黄金期についてを書いていきます。

 

 

トータルリコール グロとシュワ

 

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「ツインズ」でコメディ路線進出を成功させたシュワがその次に出演を決めたのは、

シュワの十八番であるアクション映画でした。

 

本作はマイノリティリポート」を書いたSF小説家・フィリップ・K・ディックの同題小説が原作。

 

火星移住を夢見ていた主人公が、せめて夢のなかだけでも実現したい!と思い、「旅行の記憶を売る」リコール社を訪れ、ハラハラドキドキの火星冒険の旅に(夢の中で)出かける……という筋書き。

 

この映画の脚本を読んだシュワは、すっかり魅了されてしまいます。

 

当時のシュワは押しも押されぬ人気俳優。

だったのですが、本人のなかではずっと、ある疑念がありました。

これは本当に現実なのだろうか

彼の感情と、本作で陥る主人公の状況とがリンクしたのです。

 

本作の監督としてシュワが推したのが、「氷の微笑」や「ロボコップ」のポール・ヴァーホーベン

シュワはその昔、レストランで彼と出会い、「いつか一緒に仕事をしよう」と握手を交わしていました。

ヴァーホーベンは本作の脚本の3分の2を読んだところで快諾します。

 

悪趣味娯楽映画の金字塔

 

結論から言うと、私はこの映画、かなり好きなんです。

 

初見は小学生の時。

金曜ロードショウでの放映で鑑賞しました。

キャッチーな設定に、ミステリ展開、そして派手なアクションと、目が離せない展開に魅了された、んですが……ただ、とにかく悪趣味!無駄にグロい!

子どものころの私にはホラーにしか思えませんでした。

 

代表的なグロシーンでいえば、

終盤、ヒロインと主人公が火星の気圧によって顔の皮膚が膨れ、目玉が飛び出る……というシーンがあります。

 

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いやー……

 

ここまでやらなくても……(笑)

 

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普通に苦しむ表情だけでいいんじゃないですかねえ……。

 

他にも、シュワの鼻に機械を突っ込んで球体を取り出すという意味不明のシーン、

 

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などなど……

当時の特殊メイク技術を最大限活かしたシーンが多く登場します。

 

これ、監督のヴァーホーベンの作風でもあるんです。

例えば、彼の出世作ロボコップ」は執拗に暴力描写が続くし、「氷の微笑」では過激な性描写が特徴です。

ヴァーホーベンがフツーの映画なんか撮るわけないんですよね(笑)

 

夢か?現実か?

 

中盤、この映画の大きな展開となるのは、

「今、主人公がいるこの場所は、夢か、現実か」

というもの。

 

  • リコール社の夢装置に座るシュワ

      ↓

  • 夢装置、起動!

      ↓

  • と、その時、謎の組織が部屋に突撃!

      ↓

  • 装置は停止。シュワに襲う組織たちをシュワがぶっ倒す!

 

というのが序盤の流れなので、

夢装置が起動して夢が続いているか、そうではないかが微妙な状態で前半は続くわけです。

なので、後半、敵側が「これは夢なんだ。早く目覚めるために降参しろ」とシュワに詰め寄ります。

 

しかし、現実であると考えたシュワはその場で敵を撃退します。

 

……で、何やかんやあってハッピーエンド!で映画は終わるわけですが、

これ、マジで現実だったのでしょうか?

 

ヴァーホーベンは「夢だった」と語っています。

そして、主人公は現実世界では夢から覚めないまま、植物人間になったのだ、と。

いやもうハッピーエンドでいいじゃねえかよ!(笑)

 

 

ってなわけで、色んな魅力がごった煮の闇鍋的映画「トータルリコール」でした。*1

 

 

キンダガートンコップ 子どもVSシュワ

 

その後、シュワはまたもやコメディに挑戦します。

それが本作。

シュワのコメディ映画のなかではダントツで面白いです。てか最高です。全人類が見るべき作品。

 

刑事であるシュワが犯人を捜すため幼稚園の先生として潜入捜査に乗り出す……という筋書き。

子ども嫌いのシュワが徐々にキッズたちと心を通じ合っていくハートフルな展開と、バイオレンスなアクション描写が入り混じる、奇妙なバランスで構成された作品です。

 

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監督はツインズでもシュワとタッグを組んだアイヴァン・ライトマン

 

Vol.1でも書きましたが、とにかくシュワのいろんな表情が見れる映画でして。

他のシュワ映画はたいていムスッとした顔でノソノソと歩くだけ、って感じなんですが、今作のシュワは泣き、笑い、怒り、そして動き回ります。それがもうめちゃカワイイ!

 

シュワ黄金期を代表する大傑作映画です。

 

ターミネーター2とキッチンウォーズ 栄光と挫折

 

その次に主演した映画が、みなさんご存知「ターミネーター2」。

興行面でも批評面でも成功を収めます。

 

その後、シュワが挑んだのは……なんと監督。

それが、「キッチン・ウォーズ/彼女の恋は五ツ星」

 

あらすじ

全米で大人気の料理番組のパーソナリティー、エリザベス。

しかし本当の彼女はまったく料理など作れず、すべてはプロデューサーの仕組んだ芝居だった。

だが、人命救助でヒーローとなったある青年を番組にゲストで迎えた事から、物語は意外な方向へ……。

(EIGA映画総合データベースより引用)

 

こちらはテレビドラマなので、映画ではないんです。

日本ではVHSで発売されたのみで、劇場公開はされておらず。

Wikipediaにも記載がないくらい、隠れたシュワ作品です。

 

私が観たのが中学生の時だったんですが、

まあ……可もなく不可もなく……ってか微妙……駄作……

という印象でした。

 

シュワ自身、それを痛感したのか、

以降の作品ではプロデューサーは時折務めるものの、監督をしての登板はしておりません。

 

ラストアクションヒーロー 名作なのに失敗作

 

はい、きました!

私のオールタイムベスト映画「ラストアクションヒーロー」でございます。

 

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あらすじ

寂れた映画館「パンドラ劇場」に入り浸る映画好きの少年ダニー(オースティン・オブライエン)は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のアクション映画『ジャック・スレイター』シリーズの大ファン。

ある日、親しい映写技師ニックの特別な計らいで、『ジャック・スレイター』シリーズ最新作の試写をひとりで鑑賞できることとなったダニー。喜び勇む彼に、ニックは彼が子供の頃、魔術師からもらったという「魔法のチケット」を手渡す。ニック曰く、それは「異次元へのパスポート」なのだという。

チケットの半券を手にしたダニーが『ジャック・スレイター』最新作を観ている最中、悪役が投げたダイナマイトが突如スクリーンから飛び出し、逃げようとしたダニーは眩い光に包まれる。彼が気がつくと、そこはたった今スクリーンで観ていたはずのジャック・スレイター(アーノルド・シュワルツェネッガー)が運転する車の中であった。

(Wikipediaより引用)

 

本作の脚本は、オフィシャルクレジットでは「リーサルウェポン」や「アイアンマン3」のシェーンブラックと、職人脚本家のデヴィッド・アーノット……となっていますが、

最初にこの脚本を書いたのは、若い二人の青年でした。

 

変わりゆく脚本

 

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タイトルは” Extremely Violent”(極めて暴力的)。

この脚本を書いたのは、当時大学生だったザック・ペン*2とアダム・レフという二人の青年でした。

 

最初に二人が書いた内容は、アクション映画のパロディをこれでもかと詰め込んだR指定のバイオレンス作品。

その後、大手映画会社が原案を買い取った後、複数の脚本家の改稿がされていきます。

そのなかで、物語の大筋である「映画のなかに少年が入る」という部分だけが残った以外は、大幅に書き換えられていきました。

 

当時、製作総指揮を担当していたシュワの

「ファミリームービーにしたい」という意向や、

製作会社側の「大味アクション映画にしたい」という意向など、

様々な思惑が、脚本は何度も変えられていきました。

 

初稿を書いた青年2人は脚本の変貌ぶりにびっくり。

しかし、青年二人の反論の声は、製作陣に届くことはありませんでした。

 

マクティアナン、大いに苦しむ

 

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監督のマクティアナンは、青年2人が書いた初稿の脚本を読み快諾します。

 

しかしながら、前述の通り脚本はどんどん変わっていき……

マクティアナンはこの脚本に大いに苦しめられることになります。

 

まず、マクティアナンは「軽快なアクション展開」は得意ですが、「コメディ」は別段得意ではありませんでした。

しかし、改変された脚本には無数のパロディコメディシーンがありました。

 

製作や脚本家に泣きつくマクティアナンでしたが受け入れてもらえず、

渋々そのシーンたちを撮ったわけです。

 

結果、観客や批評家からは「コメディシーンがダサい」「スベッている」と評されてしまいます。

 

しかし、私は断固反論したい。

めちゃくちゃ面白いじゃん!

いや、そりゃあこれを「レゴムービー」のフィル・ロードクリストファー・ミラー監督が撮っていたら……最高にウケるシーンになっていたでしょうよ!

でも、笑いはしないけど、最高に楽しい!シーンには仕上がっています。

 

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私が一番好きなコメディシーン

 

現実世界へ出たシュワが、相棒の少年の家で朝食を食べるのですが、その少年の母親とすっかり意気投合。

そして、ラジオから流れてくるモーツァルトに聞き惚れてしまいます。(シュワの生きる映画の世界ではクラシック音楽が存在しないのです)

 

シュワは尋ねます。

「これは誰の曲だ?」

モーツァルトだよ、と答えると、

「殺し屋の?」

という返答。

 

作曲家にモーツァルトという人がいることを伝えると、

モーツァルトかあ……」と微笑むシュワ。

 

その表情を見た少年は一言。

 

「ママ。僕のヒーローをただのオッサンにしたな」

 

という流れ。

まあ、大爆笑ってわけではもちろんないですが、

楽しい、ハートフルなシーンだと思いませんか。

 

他にも、ターミネーターの主演がスタローンになっていたり、

 

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楽しいシーンがたくさんあります。

 

赤字と不評

 

製作側が苦しみ続けた果てに、映画はようやく完成。

映画館での上映がスタートしました。

 

結果は……大不評

 

興行面は赤字となり、批評家からも否定的意見ばかりが発せられました。

 

監督のマクティアナンは傷心し、

引きこもり生活をスタートさせてしまいます。

 

何故、不評になってしまったのか?

それは、観客が期待するものと作品の内容の不一致にありました。

 

当時のシュワ映画といえば「アクション」。

本作の広告でもアクション映画であることを強調していました。

なにせタイトルが「ラストアクションヒーロー」。

観る側は「コマンドー」のような作品を期待して劇場へ足を運びました。

しかし、蓋を開けてみれば、「ニューシネマパラダイス」のようなハートフルコメディに少量のアクション演出……だったわけです。

 

需要と供給が一致しなかったことが、失敗作の烙印を押された最大要因でした。

 

それでもボクは、これを推す

 

例えば、「ブレードランナー」のように、

上映時はそっぽを向かれていたけれど徐々に作品の質が認められ人気を博す……といった現象もあるわけです。

 

本作もそのはずだと思っていたんですが、

ネットのレビューを見ると、高くもなく……低くもなく……

否定的意見も散見されます。

 

しかし、しかし、それでもボクは、本作を押します。

 

「映画のなかに入りたい!」

映画好きの子どもの夢を、莫大な予算と豪華なキャストで実現してくれた本作。

この時代のハリウッド、この当時のシュワだからこそ実現出来た、奇跡のような映画。

 

それが、ラストアクションヒーローです。

 

 

ってなわけで、以上がシュワの黄金期でした。

 

次回、Vol.3ではシュワの暗黒期を書いています!↓

 

ではまた!

*1: 2012年にリメイク版が公開されています。こちらは原作にかなり忠実な作りに仕上がっており、楽しめる作品になってます。 

*2: 後にアメコミ映画の脚本を多く手掛けることになります。近年ではスピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』(2018年)の脚色も手掛けています。 

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