映画「スウィングキッズ」感想&考察(ネタバレあり)

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朝鮮戦争下、国籍も年齢も異なる「ダンス好き」が集まった。

彼らの名は……スウィングキッズ!

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「サニー 永遠の仲間たち」のカン・ヒョンチョル監督最新作!「スウィングキッズ」を感想&考察します!

収容所でも明るくタップ!

実は本作、今の今まで全くノーマークでした。

大規模な宣伝もなく、メジャーな映画館では上映されていないため知ることができず……。

今日の朝、Youtubeを漁ってたとき、広告としてたまたま本作の予告が流れたンですよね。

『スウィング・キッズ』2020年2月21日公開!【本予告】
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コレで完全に心を鷲掴みにされました。

おそらく終盤に持ってくるであろう、スウィングキッズのタップダンス!

ここでグワッーと盛り上がって終幕!
「バーレスク」や「セッション」が大好きな私は、その期待を胸に劇場へ走りました。

↑上映前にいただきました。

冒頭。朝鮮戦争下の強制収容所……と聞くと、陰鬱な暴力で支配されているイメージが浮かぶ設定ですが、ノンノン、非常に明るく活気に満ちた挑戦捕虜たちの姿が映ります。

時に米兵をからかいながら笑い合う姿は、とても捕虜とは思えない快活さ。

そのなかでも特段活気があり、トラブルメイカーなのが、本作の主人公であり、北朝鮮兵士のロ・ギス(D.O.)。

(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

ブロードウェイのタップダンサーだった米軍下士官のジャクソン(ジャレッド・グライムス)のタップを見たことで、タップに魅了されてしまいます。

収容所内でタップを踏むロ・ギス。
しかし周囲は「アメリカ人の真似するな」と冷ややか。

周囲の態度に一度は辞めようとするロ・ギスでしたが、もうとにかくタップしたくてたまらない!

ついには、周りがトンカチを打つ音や、寝言や寝息までタップに聞こえてしまう禁断症状が……!

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コレ、「わかるわ〜」の連続でした(笑)

私も大学時代、タップを2年ほどやってたんですが、ドハマリしてた時はもうタップしたくてたまらない。

稽古場へいく電車の中でも、ガタンゴトンがタップの音に聞こえる。
大学教授の喋りに乗せてこっそりタップを踏む。

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ダンスにハマってる方々にはロ・ギスの禁断症状は「あるある!」だったんではないでしょうか(笑)

こんな感じで、前半は終始明るくコメディチック。

このまま最後まで突っ走ってくれ!
そう私の中では願っていました。しかし、そんなにうまくは行かない。私は忘れていました。これが戦争映画だということに……。

陰惨な状況のなかで

その後、ジャクソンの号令のもと、ロ・ギスと朝鮮人3人はタップダンス集団「スウィングキッズ」を結成。米兵らの前で踊る発表会に向けて稽古を続けます。

(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

しかし、挑戦捕虜たちが次第に米兵への不安を募らせ、レジスタンスを開始。
アメリカかぶれのタップを披露するロ・ギスらスウィングキッズらは、捕虜たちから責め立てられます。

いっぽうの米兵も、そのレジスタンスに対抗し、挑戦捕虜の殺戮を決行。

笑顔で溢れていた収容所は、一気に地獄絵図と化します。

ココの描写がとにかく容赦ない。

米兵によって足と腕を無くした朝鮮兵が、生々しくただれた肩を突き出す姿や、銃弾を浴びまくる朝鮮捕虜といった、グロテスクかつ陰惨な描写が続きます。

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やっぱ韓国映画だわ……(汗)

戦争を描きつつ明るさや希望を描いたコメディ映画といえば、最近では「ジョジョラビット」がありましたが、それに近いものを感じました。

希望を持って生きようとするけど、周囲の暴力衝動に飲み込まれ、自分も加担しそうになる……といった心理模様は、「ジョジョラビット」で描かれる「ヒトラーや周囲に飲まれ、いち人間であるユダヤ人を迫害してしまう」という集団心理に似たものを感じました。

こうした陰惨な現状のなか、スウィングキッズのメンバーであるカン・ビョンサムは発表会に出ないことをメンバーらに伝えます。

「生き別れた妻もきっと、本国で米兵に強姦を受け、殺害されている」

タップダンスをした目的である「生き別れた妻を捜すために有名になる」が潰えたことを理由に、彼は稽古場から去ろうとします。

黙って彼を見つめるメンバーたち。

その時。太っちょシャオパンが「スウィング」を流し始めます。
音楽を止めるよう伝えるヤン・パンネ。しかしジャクソンはそれを制し、タップを踏み始めます。
シャオパン、ヤン・パンネはそれを受けてタップを開始。

ビョンサムは立ち止まります。

目には大粒の涙。

こぼれた涙粒が、自分のタップシューズにぶつかります。

彼はタップを踏み始める。そのままメンバーと合流。くしゃくしゃの顔で踊るビョンサム。

いくらツラい状況においても、「好き」には抗えない。
そうして自然に現れた「好き」に救われていく。

映るカーネギーホール

その後、米兵を囲んだ発表会がスタート。

スウィングキッズらは「スウィング」に乗せてタップを披露。

(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

ココが「バーレスク」ばりに盛り上がるはず!と思ってたんですが、個人的にはそこまで盛り上がらず……。

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コレ、ふたつの理由があると思っていまして。

ひとつは、本場面に到るまでにスウィングを流しすぎたということ。

今まで別の曲で踊ってて、最後の最後にスウィング!であれば、「やっとスウィングキター!」ってなっと思うんです、この辺りは、ロッキーシリーズで最後の最後にあのテーマソングが流れるのと似た感じですね。

もうひとつが「踊り全体を見せてくれない」こと。

タップダンスって、体全体を使ったダンスなので、足元の動きと上半身の動き、両方とも要注目ポイントなんですよ。

しかし本作では、上半身だけ、とか、下半身だけ、といったショットが多く、全体を見せる場面が少ない。

そのため、どこか俯瞰的な、臨場感の伝わらないダンスシーンになってしまったのかな……と思っています。

そんな感じで「うーん……」な印象でスウィングキッズの場面が終了。
舞台袖にハケるスウィングキッズ。終幕、と思いきや、彼らの背後から鳴り響くタップ。

振り返ると、そこには音楽なしでひとり踊るロ・ギス。

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ココ、めちゃくちゃ「セッション」と重なりました。

無音の館内に響く足のぶつける音。

唖然としながらそれをみる米兵たち。

ロ・ギスはそっと顔をあげます。そこは……巨大なカーネギーホール。
大きな拍手を送る観客。スタンディングオベーション。

もし、戦争がなかったら。

彼は今頃、カーネギーホールでタップを踏んでいたはず。

ロ・ギスの悲願が、光景となって彼の前に現れる。
そして、彼のタップを見ていたジャクソンもきっと、カーネギホールに立つロ・ギスの姿が映ったンではないでしょうか。



虚しく光るタップシューズ

その後、スウィングキッズはジャクソン以外銃殺。

なんてむごい。ロ・ギスに関してはタップの要である両足を銃撃された後殺されるという陰惨さ。もう、どうしてこんなことに……。

ジャクソンの抵抗虚しく、ロ・ギスら朝鮮人たちは帰らぬ人となりました。

数日後。トラックに乗り収容所を後にするジャクソン。

彼の視界には、戦地に横たわる死体たち。
そのなかで、タップシューズの鉄板が白く光ります。

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ジョジョラビットの終盤の「ある場面」にも重なるシークエンスです。

ここまで見て、私はもうとにかく辛くて嫌になり「もう帰ろうかな」と何度も考えました。

このタップシューズの場面でその感情はピークに達し、席を立とうとしたその時。場面は数十年後に変わります。

おじいちゃんになったジャクソンは、当時の収容所を訪れます。

そこで、スウィングキッズとして踊った舞台を訪れ、床にそっと触れます。

そして彼が振り返ると……生前のロ・ギスの姿。

ジャクソンとロ・ギスはふたり、タップダンスを踊るのでした……。

(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

とにかく悲惨で陰惨な物語が、このシークエンスでちょっぴり救われた。そんな印象を受けました。

これでロ・ギスらが生き返るわけでもないし、戦争が肯定されるわけでもない。

しかし、ロ・ギスはタップを通じ、ジャクソンのなかで生き続けている。

今もジャクソンのなかでは、ロ・ギスのタップが鳴り続けている。

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「記憶のなかで生き続ける」ことで、ロ・ギスが報われたように思いました。

と、いうわけで、決して「笑って楽しいタップエンターテインメント」とは言えない、韓国映画らしいグサリとくる戦争映画の側面もある「スウィングキッズ」。

未鑑賞の方は是非、ご鑑賞くださいませ!

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