【書評】ケーキの切れない非行少年たち

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毎日後を絶たない犯罪。

なぜ、人は過ちを犯してしまうのか?

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宮口幸治氏はこの理由のなかに「認知のゆがみ」がある、と主張します。

私が本書を読んで感じたのは、この「認知のゆがみ」は、誰でも大なり小なりあるということ、そして、犯罪者たちの心理が特別なものではなく、私たちの心の奥底に眠っている(あるいは既に目を覚ましている?)ものであること。

今回は、「認知のゆがみから引き起こされる社会問題」をテーマにした、宮口氏ののベストセラー書「ケーキの切れない非行少年たち」を感想&考察します!

過去の体験が生み出す「被害的思想」

本書冒頭。筆者は「認知のゆがみ」の最たる例として「対人関係」を上げています。

例えば、AさんがBさんに挨拶して、返事がなかったとします。

ここで、「私を無視している」と取るか、「気づかなかったんだな」と取るかで、当事者の心情は大きく変わってきます。

「無視」と捉えると、怒りが込み上げ、相手への憎しみが募る。

いっぽう、「気づいていない」と捉えると、怒りは込み上げず、相手への不快感もない。

そしてもう一度挨拶をしてみる。また無視されたとしても、「あ、今度は私の声が小さかったのかな」と捉えれば、怒りは現れません。逆に「やっぱりワザと無視してるのか」と考えれば、怒りが込み上げてきます。

なぜ、後者のようなネガティブな捉え方をしてしまうのか?

筆者は、その背景として「攻撃的、被害的思想」を挙げています。

性加害者は、性に対して歪んだ思考(「実は女性は襲われたいと思っている」等)をもっていたり、対人関係において「社会の人たちは皆敵だ」「自分は皆から避けられている」「自分には価値がない」といった攻撃的、被害的思考をもっている場合があり、そういった歪んだ思考が性加害行為に繋がっている可能性があります。

本書P5より

この「対人関係への被害的思考」、実は誰のなかにも眠ってるのでは・・・?と思いました。

実体験でいうと、私は大学時代、わりとピカピカな4年間でした。ゆえに自分に対する自信も保てていて、「周りから嫌われている」という意識は皆無でした。

しかし。社会人1年目。ミスを繰り返すうちに自信は崩壊。

「みんな自分を笑ってるんでは?」「周りはみんな敵で、笑いながら腹のなかでは私を嫌ってるんだ」と思った時期がありました。

しかし、仕事に慣れ始め、ミスが減ってからは徐々に自信を取り戻し、「敵」と感じていた人とも普通に接せられるようになりました(もちろん彼らは「敵」じゃなかったです笑)

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こういう経験、大なり小なりみなさん経験があるンではないでしょうか。

つまり、「認知のゆがみ」は誰のなかにもあり、特別なものではないのです。

「悪いこと」とは何か?を知らない

しかし、被害的思考を持った全員が罪を犯すわけではありません。

むしろ、犯さない人が大半です。

それはなぜか?といえば、それをすることが「悪いこと」と考えているからです。

なぜ悪いことだと思うか?といえば、幼少期にオトナから「良いこと」「悪いこと」の区別や線引きを教わったり、テレビで罪を犯した人間が捕まる様子を観るなど、過去に経験した潜在的な記憶や体験から導き出されていく。

しかし、例えば幼少期に親から虐待を受けていた少年は、暴力が「悪いこと」と思わず、むしろ「教育」という名の「良いこと」として認識している。

こうして「悪いこと」とは何か?を知らずに育った少年少女が、やがて「非行」へ走り始めるのです。

たとえば、彼らに次のような質問を投げかけたとします。

「あなたは今、十分なお金をもっていません。一週間後までに10万円用意しなければいけません。どんな方法でもいいので考えてみてください」

「どんな方法でもいいから」と言われると、親族から借りる、消費者金融から借りる、盗む、騙し取る、銀行強盗をする、といったものが出てきます。

「(親族などに)借りたりする」という選択肢と、「盗む」という選択肢が普通に並んで出てくるのです。

本書P37より

しかし、前述した「児童虐待」であったり、「いじめ」の経験がある者でも、非行に走らない者もいます。

なぜ走らないか?

筆者は「計画力の有無」が要因と語ります。

「盗む」などという選択肢をすると後が大変になるし、そもそもうまくいくとも限らない、と判断するのが普通の感覚でしょうが、そう考えられるのは先のことを見通す計画力があるからです。

しかし先のことを考えて計画を立てる力、つまり実行機能が弱いと、より安易な方法である盗む、騙し取るといった方法を選択したりするのです。

本書P37より

計画力があると、「これをすると、こういう結果が生じる。この結果が生じれば、自分にこんな被害が起きるし、誰かがこういう目に遭う」という予測が出来、結果、非行を防ぐことが出来ます。

これも、特別なことではない気がしていて。

気分が滅入っていたり、悩みごとがあったりすると、そればかりに思考がいき、他の選択が安易になってしまう……。

結果、選択に失敗し、大きな損失や被害が発生する。

こうして、負の連鎖が始まる。

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これも、決して他人事ではない、往往にして起きる現象ですよね。

不適切な自己評価

私の周りの人でも多いのが、自己評価が異常に低い人。

良いものをたくさん持っているし、「私もこんな能力が欲しい」と感じる人なのに、当の本人はやけに評価が低い。

その能力を肯定しても、「でも、今の仕事で必要ない能力だし」とか「それ以上にこういう欠点がある」とマイナス面を無理やり引っ張り羅列し始めるンです。

どうしてか?筆者は「他者との人間関係」が背景にある、と挙げています。

「自分と話しているとAさんはいつも怒った顔をしている。自分はAさんから嫌われている気がする。自分のどこが悪かったのだろう」

「あのグループのみんなはいつも笑顔で私に接してくれる。きっと私はみんなから好かれているんだ。意外と私は人気があるのかも」

といったように、相手から送られる様々なサインから、「自分はこんな人間かもしれない」と少しずつ自分の姿に気づいていくのです。

本書P77より

つまり、自分に対し低い評価を下す人とばかりいると、次第に自分に自信を失い、自己評価も下がっていく。逆に、自分に対し高い評価を下す人といれば、次第に自信が湧いてくる。

どちらか一方のタイプとだけ接するのではダメで、どちらとも接する。

そうすることで、「自分はこれがダメで、これが得意なんだ」ということがわかる。

それがわかれば、自分の「得意なもの」を仕事にして、「不得意なもの」は別の場所で改善するか、あるいは放っておくかすれば、過度なストレスを感じずに働くことができるわけです。

等身大の自分を知る

ここまで書いた、

  • 被害的思考
  • 計画力の欠如
  • 不適切な自己評価

については、特別なことではない、と書いてきました。

すなわち、誰もが持ち合わせており、これに苦しんでいる。

しかし、かといって罪を犯すことはしません。

なぜか?ということに関して、筆者は「等身大の自分を分かっていないこと」が要因と語ります。

何もできないのにえらく自信をもっている。

逆に何でもできるのに全然自信がもてない。

要は、等身大の自分を分かっていないことから問題が生じるのです。

本書P126より

私自身、社会人2年弱を経験し、自分が「できること」と「できないこと」が分かってきました。

もちろん「できない」からといって一生できないわけではなく、続けていれば「できる」ようになることもあります。

例えば、このブログ。最初は1日に一人か二人見てくれればいいほうで、「1日100PVなんて夢のまた夢だよな」と思っていました。

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しかし、半年継続した結果、1日100PVを達成することができました。

つまり、「できない」からといって全てを投げ出す必要はないのです。

要は「できる」ことは自信を持って堂々と行い、逆に「できない」ことは批判や指摘を覚悟でコツコツ積み上げていく、マイナス要因が発生しても落ち込まない、ことが大切なのです。

……というわけで以上、「ケーキの切れない非行少年たち」レビューでした!

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